英語圏で「地下室に水の虫(water bug)がいる」は、害虫の判定でいちばんよく聞く言葉のひとつです。そして、その虫はたいていゴキブリです。このあだ名は古く、地域によって使われ方がちがい、ゴキブリと言わずにすむ少し上品な言い方でもあります。本物の「水の虫」、つまり水生のカメムシは池にすんでいます。このガイドでは、見つけたのがどちらなのか、そしてそれが何を意味するのかを整理します。
ゴキブリが「水の虫」と呼ばれる理由
大型のゴキブリには水を好む種がいくつかあり、名前はそこから来ています。Penn State Extension によると、トウヨウゴキブリがよく「水の虫」と呼ばれるのは、流しの下、床の排水口、床下、湿った地下室など、暗くて湿った涼しい場所を好むからです。地面と同じ高さかそれより下にとどまり、壁の高いところや上の階で見つかることはめったにありません。
もうひとつのおなじみの容疑者が、カード #144 の ワモンゴキブリ です。University of Florida の Featured Creatures のページによると、ワモンゴキブリはおもに地下室、下水道、蒸気配管のトンネル、排水設備にすみ、下水から配管を通って家の中に入ってきます。アメリカ南部ではよく「palmetto bug」とも呼ばれますが、同じページによると、この名前は本来 Florida woods cockroach(Eurycotis floridana)を指すものです。
つまり「水の虫」は種の名前ではありません。そのゴキブリが見つかった場所を表した言葉です。
見分け方
| タガメの仲間 | トウヨウゴキブリ | ワモンゴキブリ | チャバネゴキブリ | |
|---|---|---|---|---|
| 大きさ | 約 5〜6 cm(2〜2.5 in)、それ以上のことも | 約 2.5〜3 cm(1〜1.25 in) | 約 4〜5 cm(1.5〜2 in) | 約 1.3 cm(0.5 in) |
| 色 | 茶色で平たい楕円形 | ごく濃い茶色から黒、光沢があることが多い | 赤茶色、頭のうしろの板のまわりに淡い帯 | 明るい茶色、頭のうしろに 2 本の黒っぽい筋 |
| 前脚 | 太くてつかむ形、はさみのよう | 細く、走るための脚 | 細く、走るための脚 | 細く、走るための脚 |
| 触角 | ごく短く、見えにくい | 長く、糸のよう | 長く、糸のよう | 長く、糸のよう |
| いる場所 | 池、湖、川。夜は明かりの下 | 排水口、地下室、床下 | 下水道、排水口、1 階 | キッチンと浴室 |
ゴキブリの大きさは Penn State と UC IPM によるものです。タガメの仲間については、Mississippi State が北アメリカの成虫で最大約 2.5 インチとしている一方、University of Maine は 2〜4 インチとしています。目安にするなら、小さいほうの数字が無難です。決め手になる特徴は 2 つあり、すぐに見分けられます。タガメの仲間の前脚は獲物をつかむための形で、触角はおそらく気づかないほど短いです。ゴキブリはどれも、体と同じくらいあることが多い長くゆれる触角と、速く走るための似た形の 6 本の脚をもっています。
はねも手がかりになります。Penn State によると、トウヨウゴキブリのメスには小さく短いはねしかなく、オスのはねは体の約 4 分の 3 をおおう程度で、オスもメスも飛びません。ワモンゴキブリは完全なはねをもっています。UF のページによると、オスのはねは腹部の先より長くのびています。
それでも迷うときは、この虫は何? に写真を送れば、名前と安全の見立てを、どのくらい確かか(ほぼ確実、たぶんこれ、一番近い候補)といっしょに教えてくれます。
本物の水生カメムシが家の近くで何をしているのか
カード #116 の アメリカタガメ は、水の中で暮らし、水の中で狩りをするカメムシの仲間です。Mississippi State University Extension によると、完全な肉食で、前脚で獲物をつかみ、昆虫、オタマジャクシ、小魚、カエルを食べます。University of Maine は、toe-biter(足の指をかむ虫)や electric-light bug(電灯の虫)などの別名を挙げ、成虫は飛び、夜の明かりに引き寄せられると書いています。駐車場や玄関灯のそばで見つかるのはそのためです。
玄関先にタガメの仲間がいる理由は、それで全部です。夏の夜に池から池へ飛んでいたところを、玄関灯に引き寄せられたのです。家の中にはすみませんし、地下室で増えることもありません。カード #116 の iNaturalist 研究グレードの記録はほとんどが 4 月から 10 月のもので、4〜5 月と 8〜10 月にピークがあります。5 月の記録は 1 月の約 60 倍です。冬に見つけたなら、とてもめずらしいことです。
かむことはあります。Mississippi State によると、かまれることはまれですが、かまれた人は、知っているほかのどの虫に刺されたりかまれたりしたときよりも痛かったと言います。ただし、痛みはすぐにひきます。ですから、手に取らないでください。びんをかぶせて下に厚紙を差しこみ、水辺に放してください。在来の捕食者で、外では何の害もありません。
フロントからひとこと:タガメの仲間は、空から到着して荷物もほどかず、いちばん近い池への道だけを聞いてくる、めずらしいお客さんです。
マツモムシの仲間 と アメンボの仲間 は、池や水たまりで見かける、もっと小さな本物の水生カメムシです。どちらも、自分から家の中に入ってくることはありません。
ゴキブリが家にとって意味すること
家の中のゴキブリは話が別で、答えはどの種かによって変わります。
- トウヨウゴキブリ: 湿気のサインです。Penn State によると、成虫は暖かい季節にはほとんど屋外にいて、数は晩春か初夏にピークになります。乾いた時期には湿気を求めて家に入ってくることがあります。床下から配管づたいに上がってきたり、ドアの下から入ってきたりします。
- ワモンゴキブリ: たいていは排水口や庭から来たお客さんです。UF のページによると、家の中で見つかることはまれですが、大雨のあとに入りこむことがあります。屋外では、まき置き場やマルチング材など、湿った日陰にすんでいます。カード #144 の iNaturalist 研究グレードの記録は 4 月から 11 月まで多いままで、4 月は 1 月の約 2.5 倍です。
- チャバネゴキブリ: ずっと家の中で暮らす種です。UC IPM は、カリフォルニア州で屋内にいちばん多い種としていて、特にアパートなどの集合住宅に多く、キッチンや浴室の食べ物に近い、暖かく湿った場所を好みます。カード #143 では記録が 1 年を通してほとんど変わらず、いちばん多い月でもいちばん少ない月の 2 倍未満です。暖房のきいた建物で暮らす動物なら、そうなるはずです。
UC IPM によると、ゴキブリのふんや脱皮がらは重要なアレルゲンで、ゴキブリの大量発生は子どものぜんそくと関連があります。ゴキブリがいつも出るなら、がまんして暮らすより、対策する価値があります。
どうすればいいか
ゴキブリには、スプレーより先に環境から手をつけます。
- 乾かす。 もれている配管や蛇口を直し、使っていない床の排水口には水を注いで、トラップに水がたまった状態を保ちます。
- 入り口をふさぐ。 Penn State は、流しの下や配管のまわりのすき間をコーキングでふさぐようすすめています。UC IPM は、ドア下のすき間ブラシ、すき間テープ、網戸も挙げています。
- 食べ物と隠れ場所をなくす。 食べ物は密閉容器に入れ、ごみ箱はふたつきにして、地下室に段ボールを積んでおかないようにします。
- 数を調べる。 UC IPM は、どこでいちばん活発かを見つけ、状況がよくなっているかを確かめるために、粘着トラップを使うようすすめています。
- くん煙剤ではなくベイト剤。 UC IPM によると、ベイト剤のほうがスプレーよりよく効きます。Penn State によると、屋内用のスプレーやくん煙剤はトウヨウゴキブリにはあまり効かず、かえって散らばらせることがあります。大量に発生しているときや、なかなかいなくならないときは、資格のある専門業者にまかせる仕事です。
本物の水生カメムシなら、びんと玄関のドアがあれば十分です。
キッチンの虫 と 浴室の虫 のガイドでは、ほかの湿った部屋のお客さんを紹介しています。虫図鑑 には、ここに出てきた種それぞれのページがあります。
出典
- Penn State Extension:Oriental Cockroaches
- University of Florida IFAS, Featured Creatures:American Cockroach, Periplaneta americana
- University of California IPM:Pest Notes: Cockroaches
- University of Maine Cooperative Extension:Giant Water Bug
- Mississippi State University Extension, Bug’s Eye View:Giant Water Bug
- 季節のパターン:iNaturalist 研究グレードの観察記録(カード #144、カード #116、カード #143 に表示)
質問
「水の虫」とゴキブリは同じですか?
家の中の虫についてそう言うなら、たいていは同じです。英語の「water bug(水の虫)」は湿った場所を好むゴキブリのあだ名で、いちばん多いのはトウヨウゴキブリです。Penn State Extension によると、この名前は、暗くて湿った涼しい場所を好む性質から来ています。タガメの仲間のような本物の水生カメムシは、池や川にすむ別の昆虫です。
タガメの仲間とゴキブリは、どう見分けますか?
前脚と触角を見ます。タガメの仲間は、はさみのような太くてつかむための前脚と、頭の下にたたみこまれたごく短い触角をもっています。体は平たくて大きく、体長 5 cm(2 インチ)前後のものがよく見られます。ゴキブリには糸のように長い触角と、走るための細い脚があり、頭のうしろに盾のような板があります。
家に「水の虫」がいるのはなぜですか?
ゴキブリなら、水分と食べ物と隠れ場所を求めて来ています。UC IPM によると、トウヨウゴキブリは地下室、排水口、水道メーターのボックスなどの涼しく湿った場所にすみます。また、ワモンゴキブリは下水管や雨水管から、傷んだ配管、網の外れたところ、水の切れた排水トラップを通って上がってくるとしています。家の中にいるタガメの仲間は、たいてい夜の明かりに引き寄せられて飛んできた迷子です。
「水の虫」はかみますか?
タガメの仲間はかむことがあります。Mississippi State University Extension によると、かまれることはまれですが、とても痛く、痛みは長く続きません。たいていは、手に取ったときや素足で水の中を歩いたときに起こります。動かすときは手ではなく、びんかコップを使ってください。かまれたあとや肌の反応で気になることがあれば、医師に相談してください。
地下室の「水の虫」をなくすには、どうすればいいですか?
ゴキブリなら、湿気と入り口をなくします。水もれを直し、床の排水口に水を張っておき、配管のまわりやドアの下のすき間をふさぎ、段ボールや物の山を片づけます。UC IPM はスプレーよりベイト剤をすすめています。Penn State によると、屋内用のスプレーやくん煙剤はトウヨウゴキブリにはあまり効かず、かえって散らばらせることがあります。本物のタガメの仲間なら、外に運んで水辺に放すだけでかまいません。
